皆無

今までに何度も呼んだ、あなたの名前
最後に一度だけつぶやく

強気な瞳だけ まだ 記憶の中に変わらずあるけど
二度と触れることのない頬の柔らかさは
指先から消えた

まだ少し風が冷たくて
背中に寄り添いあった夜が頭をよぎるよ
あの温もりは今は誰のもの?

見上げた月は何も映さない
無意味な感情に行くあてはない
彷徨う街にあの優しさはない

色褪せてはくれぬ思い出を抱えたまま
闇に紛れて孤独を知った

さよならを言えなかった惨めな僕を
あなたは笑って、忘れてくれればいい
僕は あなたの胸に 何も残さない